誌上ベトナム語講座4
日本語とベトナム語の統語(とうご)構造の違い

前回は、日本語とベトナム語の修飾関係の違い(修飾語と被修飾語の語順が逆であること)について書きましたが、今回は日本語とベトナム語の「文の統語(とうご)規則」(=語(ご)と語の組み合わせによる、文の構成ルール)の違いについて述べます。

述語(じゅつご)の位置――日本語文では文の最後、ベトナム語文では文中

文とは「主語chu ngu +述語 vi ngu」からなり、まとまった内容を表すひとつづきの言葉のことで、日本語の文では文の最後に句点(くてん)(。)がつきます。主語と述語の関係は、主語に関する情報を与えて主語について説明するのが述語であり、主語は述語の示す動作(どうさ)・作用(さよう)・状態(じょうたい)・属性(ぞくせい)などの主体を表すという点にあります。日本(にほん)大百科(だいひゃっか)全書(ぜんしょ)(ニッポニカ)には述語について以下のように書かれています。「言語活動における発話(はつわ)の単位としての文が、現実世界のある局面(きょくめん)を表す(または表しうる)ものである限り、その文にこのような部分(ぶぶん)(述語)が不可欠なのは当然であり、したがってどの言語においても、その正規(せいき)の文には述語と呼びうる部分が存在(そんざい)する。」
述語の中心に来る品詞は動詞、形容詞、名詞であり、左記(さき)のそれぞれの品詞が述語になっている文を動詞述語文、形容詞述語文、名詞述語文と言います。そして動詞述語文ではその動詞が他動詞の場合、述語の意味を十分に表すために目的語が必要になります。
例文を挙げると、「私はベトナム語を勉強します」が動詞述語文、「この花は美しい」が形容詞述語文、「私は日本人です」が名詞述語文です。上記の動詞述語文で使われている「勉強する」という動詞は他動詞なので目的語が必要になります。これらの各文の述語は文末にある「勉強します」、「美しい」、「日本人です」です。
以下、動詞述語文について日本語文とベトナム語文の統語規則の違いを例文を挙げて述べます。
日本語文「私はベトナム語を勉強します」をベトナム語で言うと、
Tôi học  tiếng việt. (họcとviệtは漢越語で、漢字に変換するとhọc=「学」, việt=「越」です)
トイ  ホック ティエン ヴィエット (tiếng việt【語+越】は日本語の語順では「越語(ベトナム語)」になります) 
 私 勉強します ベトナム語  (ちなみに「日本語」はtiếng Nhật【語+日】、「日本」はNhật Bản【日本】です)
この例(れい)から導き(みちび)だせる文の統語規則は、第一に、日本語文では述語「勉強します」は文の最後に来ますが、ベトナム語文では述語(日本語の「勉強します」に当たる「học」)は文中に来るということです。文中における述語の位置から見るとベトナム語は英語と同じなのです。
ベトナム語:Tôi học tiếng việt. 
英語   :I study Vietnamese.   (Tôi=I, học=study, tiếng việt=Vietnamese)
これらを主語=S、動詞=V、目的語=Oという言葉を使ってその語順の規則を表現すると、日本語はSOV型(がた)=【主語+目的語+動詞】、ベトナム語は英語と同様(どうよう)にSVO型=【主語+動詞+目的語】ということになります。

日本語文の特徴(とくちょう)đặc trưngはどの名詞の後ろにも助詞が付き、ベトナム語文の特徴は
主語と目的語は語順で表し、それら以外の名詞が持つ役割は前置詞(ぜんちし)で表す

前述(ぜんじゅつ)した2つの例文を品詞の観点から見ると、
<日本語>     私  は    ベトナム語 を  勉強します
(名詞+助詞) +(名詞 +助詞)+(動詞)【文法関係から見ると動詞は「述語」】
<ベトナム語文>  Tôi        học       tiếng việt.
(名詞) + (動詞)【前同「述語」】 + (名詞)
私       勉強します     ベトナム語
です。
ここから導き出される両言語の統語(とうご)規則上(きそくじょう)の違いの第二は以下の通りです。
日本語文の場合は、述語の前にあるどの名詞の後ろにも助詞が付き、それぞれの助詞は、その前にある名詞が述語との関係でどのような役割をしているかを示すという特徴を持っていることです。これらの点については「東京大学日本語教育センター」のウェブサイトの中の「日本語学習入門」の中の「日本語って、どんな言葉?」を読んでください。分かりやすく説明されています。
上記の「私はベトナム語を勉強します」で説明しますと、「は」はその前の名詞「私」が主語あるいは主題であることを、「を」はその前の名詞「ベトナム語」が動詞の目的語であることを示しています。繰り返しますが、名詞の後ろに「は」が来ていたら、その名詞は文の主語か主題であり、名詞の後ろに「を」が来ていたら、その名詞は動詞の目的語ということです。ただし例外があります。「(名詞+を)+動詞」の中の名詞が「公園」や「下」のような場所を表す名詞で、動詞が「散歩する」「出る」「着く」「降りる」「飛ぶ」などの移動動詞の場合、あるいは「向く」などの動作の方向を示す動詞の場合(例えば「公園を散歩する」「下を向く」のような場合)は除(のぞ)きます。
移動動詞や動作の方向を示(しめ)す動詞は「他に影響を与えない動詞」=自動詞ですから、「を」の前の名詞は目的語ではありません。「公園を散歩し」て、「位置変化」が起こっても、この場合、「自分の位置」が変化するだけで、何か他のものの位置が変わるわけではなく、その影響は他に及びません。このような「他に影響を与えない動詞」を自動詞と言います。この場合の「を」という助詞は、その前の名詞が動詞の目的語であることを示しているのではなく、動詞(述語)との関係で ”通過点” であることを示すという役割を担(にな)っているのです。
他方、ベトナム語の場合は英語と同様に、主語や目的語については語順で表し、その他(主語と目的語以外)の役割の名詞については、前置詞でそれ(名詞の役割)を表すという特徴を持っています。上記の例文で言うと、動詞học(勉強する)の前に名詞Tôi(私)を置くことによってその名詞Tôiが主語であることを、また動詞の直後に名詞tiếng việt(ベトナム語)を置くことによって、その名詞tiếng việtが動詞の目的語であることを示すのです。
「その他の役割の名詞については、前置詞でそれを表す」というベトナム語の前置詞については後述(こうじゅつ)する「日本語の助詞とベトナム語の前置詞の対応関係」の項で述べます。
日本語文では主語になっている名詞であろうが目的語になっている名詞であろうが、どの名詞の後ろにも必ず助詞が付くという特徴を持っていますので、日本語教育の文法では「名詞+助詞」を「成分」と捉えます。そして文の構造を「主語+動詞…」と捉えるのではなく、「成分1+成分2+…+述語」と捉え、それぞれの成分を述語の意味を十分に表すために必要な語と考えて、補足語(ほそくご)あるいは補語と呼びます。これらを分かりやすく一覧表にすると以下のようになります。

日本語文佐藤さんが三宮で友達とコーヒーを飲んだ
品詞の観点から名詞+助詞名詞+助詞名詞+助詞名詞+助詞動詞
日本語教育の文法成分1成分2成分3成文4述語
意味役割の観点から動作の主体動作の場所動作の相手動作の対象動作
名詞の格注1ガ格(主格)デ格ト格ヲ格(目的格)
述語から見た成分の性質必須(ひっす)成分(せいぶん)
(必須補語)随意(ずいい)成分(せいぶん)(副次(ふくじ)補語(ほご)=状況語(じょうきょうご))
随意成分(副次補語=状況語)必須成分 (必須補語)
項注2に基づく動詞の分類2項動詞

注1 「格」とは例文の説明に限って簡単に言うと、文中の名詞が述語との関係でどのような役割を果(は)たしているか、ということです。大辞(だいじ)林(りん)第三版は以下のように説明しています。「名詞・代名詞などが、文中で他の語に対してもつ関係。日本語では、「が・の・に・を」などの格助詞が格の関係を示す」。格助詞 case marker
注2 文中の成分のうち、なくてはならない成分(必須成分)を項と言います。必須成分が1つでいい動詞を1項動詞、2つ必要な動詞を2項動詞、3つ必要なものを3項動詞と言います。必須でない成分は随意成分と言い、随意成分には状況語(場所や時間等を表すもの)と修飾語(品詞で言うと形容詞や副詞)があります。まとめると以下の通りです。
        必須成分 (thành phần thiết yếu)=項
成分(thành phần)   タン ファン ティエット イウ 修飾語 (từ bổ nghĩa)
      タン ファン 随意成分 (thành phần tùy chọn) トウ ボ ギア
タン ファン トゥイ チョン 状況語 (trạng thái từ)
チャン タイ トゥ
上記のベトナム語(漢越語)を漢字変換すると、thành phầnタン ファン【成分】、thiết yếuティェット イウ【切要】=必須、tùy chọnトゥイ チョン【随選】=随意の、選択自由の、trạng tháiチャン タイ【状態】=状態、状況です。これまでも述べてきましたが、漢字を語源とするベトナム語の発音(漢越音)と漢字の音読みは似ています。

表中の「佐藤さんが友達と三宮でコーヒーを飲んだ」という日本語文は、ベトナム語と英語の統語規則では、以下のようになります。
<日本語文>     佐藤さん が 三宮 で 友達 と コーヒー を 飲んだ
(品詞での語順の表現) (名詞+助詞)+(名詞+助詞)+(名詞+助詞)+(名詞+助詞)+動詞
<ベトナム語文>   Ông Sato  đã uống cà phê  ở Sannomiya   với bạn của mình.
オン サトウ  ダ ウォン カフェ オ サンノミヤ   ヴォイ バン クア ミン
(日本語との対応関係) 佐藤さん  飲んだ   コーヒー  で 三ノ宮   と 友達 の 自分
(品詞での語順の表現) 名詞 + 動詞 + 名詞 + (前置詞+名詞) + (前置詞+名詞)
<英語文> Mr. Sato drank  coffee in Sannomiya with his friend
名詞 + 動詞 + 名詞 + (前置詞+名詞) + (前置詞+名詞)
(uống=drink 飲む / đã uống=drank 飲んだ / của mình 自分の)

動詞の前に来ている名詞が主語、動詞の後ろに来ている名詞が目的語で、主語、動詞、目的語が文の根幹をなす「必須成分」、後ろの「前置詞+名詞」は随意成分です。
必須成分と随意成分という観点は長文読解の時に重要になります。必須成分を取り出せば、その文の大意を素早くつかむことができるからです。
日本語学習者の語彙力が不足していて日本語文の意味を部分的にしか分からなくても、日本語文では動詞は文の最後に来ること、助詞の「が」の前の名詞は主語、「を」の前の名詞は目的語という規則を知っていると、日本語文の中から動詞、主語、目的語という必須成分を機械的に取り出すことができ、まずは随意成分を除いて日本語の統語ルールであるSOVに並べることによってその文の構造が分かり、大意をつかみやすくなります。そして次にその大意に肉付けするものとしての随意成分の意味を加味すれば、文全体の内容を理解できるようになります。もしそこで知らない単語がある場合には、その文の構造の理解と当該文の前後の文の内容・大意をヒントにして、その知らない単語の意味を論理的に推測しやすくなります。他方、日本語をベトナム語に訳す場合は、日本語文の主語と目的語に付いている助詞を取り除いてベトナム語の統語規則であるSVO(品詞で言うと名詞+動詞+名詞)という語順に並べ替えればいいということになります。上述の例文で言えば、「佐藤さん 飲んだ コーヒー」という語順に並べ替え、それぞれの語をベトナム語に変換したらいいということになります。これら必須成分以外の随意成分については 日本語の助詞に対応するベトナム語の前置詞をそれぞれの名詞の前に置けばいいということになります。

日本語の助詞とベトナム語の前置詞の対応関係

まず最初にベトナム語でよく使う前置詞と、それを使った表現例を以下挙げておきます。ベトナム語に対応する英語の前置詞も書いておきます(ちなみに日本語文で名詞の後ろに来る助詞のことを、英語の場合の「前置詞」との対比で「後置詞」という場合もあります)。

ベトナム語英 語日本語
từ  トゥfrom(時間・場所)〜から
đến  デンto(時間・場所)〜まで、〜へ
với  ヴォイwith〜と(一緒に)
cho  チョfor~ために
về  ヴェabout~について
ở / tại オ / タイon / at / in(場所)~に、〜で
trong チョンIn~の中で、~の中に
lúc ルックat(時間)~に
vào  バオon / in(日、月、年)~に
bằng バンby~で(手段・材料)
sau  サウafter(時間・場所)~の後に
trước チュオックbefore(時間・場所)~の前に
trên チェンon~上に、~の上で
dưới ズオイUnder / below~下に
qua クアthrough〜を通って
hơn ホンthan〜より

上記の前置詞を使った表現例(語順は英語と一緒ですので、英語での表現も書いておきます)
・家(nhàニャ)から学校(trườngチュオン)まで ⇒ từ nhà đến trường  トゥ ニャ デン チュオン
từはその後ろの名詞が述語との関係で「起点」という役割を担っていること、đếnはその後ろの名詞が「着点」という役割を担っていることを表す前置詞です。英語では from home to schoolです。
・友達(bạn bè バン ベ)と一緒に   ⇒ với bạn bè ヴォイ バン ベ
    vớiはその後ろの名詞が「一緒に動作をする相手」という役割を担っていることを表す前置詞です。英語でwith one’s friendです。
・バイク(xe máyセーマイ)で行きます(đi) ⇒ đi bằng xe máy ディ バン セーマイ
    bằngはその後ろの名詞が「手段」という役割を担っていることを表す前置詞です。英語で go by motorcycle です。
・私は 家から 学校まで 友達と 一緒に バイクで 行きます。
⇒ Tôi  đi bằng xe máy từ nhà đến trường với bạn bè.
= I will go by motorcycle from home to school with my friend.

日本人にとって英語の勉強で前置詞の使い方が難しいように、日本語を勉強するベトナム人にとっては助詞の使い方が難しいようで、よく間違えます。ちなみに「助詞」はベトナム語でtrợ từチョ トゥと言います。この漢越語を漢字変換すると【助詞】です。
 例を挙げてみます。
私の息子は日本で働いています。      (英語)      (助詞 ベトナム語 英語)
Con trai tôi làm việc ở nhật bản.  My son works in Japan.  ⇒ で → ở → in
コン チャイ トイ ラム ヴィエック オ ニャッ バン con trai:息子 tôi:私 làm việc:仕事をする
私の息子は日本に住んでいます。
Con trai tôi sống ở nhật bản. My son lives in japan.   ⇒ に → ở → in
コン チャイ トイ ソン オ ニャッ バン     sống:住む
 上記の2つの日本語文では助詞を「で」と「に」に使い分けていますが、日本語文に対応するそれぞれのベトナム語文ではともに「ở」という前置詞を使っています。私たち日本人は、日本語が母語ですから無意識的に、感覚的に正しい助詞を使うことができます。しかし日本語学習者にとっては「で」と「に」の用法の違いをしっかり理解していないと正しい助詞を使うことはできず、彼らは知っているいくつかの助詞の中から根拠なしに思い浮かんだ一つを口にするということになります。そのようなやり方をすると、日本語の文では「名詞+助詞」(=成分)がいくつも出てくるのですから、文の意味は通じなくなります。正しい助詞の選択には法則がありますので、その法則を理解することが文法的に正しい文を作る上でカナメになります。
法則という点から具体的に見てみます。「日本で働く」という時の「で」という助詞は、その前の名詞「日本」が “行動・動作の場所” であることを表しています。つまり、文中の名詞が述語との関係で “行動・動作の場所” であるときは、その名詞の後ろに「で」を使うのです(前述の「バイクで」という場合は、同じ「で」でもこちらはその前の名詞が「手段」という役割を担っていることを表すものです)。また、「日本に住んでいる」という時の「に」という助詞はその前の名詞「日本」が “存在の場所” であることを表しています。つまり、文中の名詞が述語との関係で “存在の場所” であるときは、その名詞の後ろに「に」を使うのです。このため日本語では話者が「で」を使うのか「に」を使うのかによって、聞く側は話者が最後にどのような動詞を使うかある程度想像できるわけです。
ベトナム語の文では、ある名詞が “行動・動作の場所” であろうと “存在の場所” であろうと一様に前置詞「ở」を使いますが、ある名詞が述語との関係で “行動・動作の場所” の時には日本語文で「で」を使わなければならないケースで、ベトナム語では前記のような「ở」だけでなく、別の前置詞trongまたはtrênを使うことも可能です。次の例文を見てください。
私は公園でサッカーをします。        (助詞 ベトナム語 英語)
Tôi chơi bóng đá trong công viên.= I play soccer in the park. ⇒ で → trong → in
トイ チョイ ボン ダ チョン コン ヴィエン chơi:遊ぶ bóng đá【球+蹴】:サッカー công viên:公園
私は運動場でサッカーをします。
Tôi chơi bóng đá trên sân chơi.=I play soccer on the playground. ⇒ で → trên → on
トイ チョイ ボン ダ チェン サン チョイ   sân chơi【場所+遊ぶ】:運動場
椅子の上で猫が寝ている
Mèo ngủ trên ghế. = A cat is sleeping on the seat.   ⇒ 上で → trên → on
メオ ング- チェン ゲェ          mèo:猫  ngủ:寝る ghế:椅子
「trong」は英語のin、「trên」は同onに該当しますので、前置詞の用法ではベトナム語と英語は類似性があります。
上記の例文でお分かりいただけたと思いますが、ベトナム人の日本語学習者が日本語で会話する時にベトナム語で使っている前置詞の意味を引きずって日本語に変換したりすると、余分な言葉を付け加えたり助詞の使い方を間違えたりすることになります。
どんな時にどんな助詞を使うかという理解を促すために、日本語を学び始めたばかりのベトナム人の日本語学習者に彼らの母語であるベトナム語の語彙を使って簡潔に説明する時にはスリーエーネットワークの『短期集中 初級日本語文法総まとめ ポイント20』ベトナム語訳(語彙・説明の一部)が参考になります。たとえば「行動の場所」はベトナム語でnơi diễn ra hành động (ノイ ジエン ラ ハ(イ)ン ドン)、「存在する場所」はnơi tồn tại(ノイ トン タイ)と言います。(nơi=場所、diễn【演】=演じる、ra=(内から外に)出る、hành động=行動注3、tồn tại【存在】=存在する)。こうした教え方をするとベトナム人学習者の日本語の語彙知識も同時に広がります。この本のベトナム語訳の部分はインターネットで検索し閲覧することが可能です。一見の価値ありです。皆さんのベトナム語の語彙の学習にもなりますよ。
注3 「行動」がベトナム語でなぜhành động(発音記号で書くと[hɑɲ doŋm])になったのでしょうか。漢字の音読みには呉音、漢音、唐音があり、漢越音は唐音を基にしている場合が多いと言われています。「行」の音読みは呉音では「ぎょう」、漢音では「こう」、唐音では「あん」です。「行」のベトナム語の発音は[hɑɲ]で、「行」の唐音「あん」に似ています。逆に言うと、「行」を唐音では「あん」と発音していたので、その言葉がベトナムでは[hɑɲ]と発音されるようになり、その表記がhànhになったと私は推測しています。このように考えると、行動=hành độngを長期記憶として頭にインプットできます

◇インターネットで無料で利用できる日越・越日辞書を紹介しておきます。

①Mazii Dictionary
「Mazii Dictionary - Từ điển Nhật Việt - Việt Nhật miễn phí tốt」(意味は「Mazii 辞書-良い無料の日越-越日辞書」)を選択します。ちなみにmiễn phíは漢越語で、漢字に変換すると【免費】です。「費を免じる」のですから「無料」という意味になります。
⇒ Tra cuu Dich JLPT …  が出てきます。それぞれの意味はTra cứu=検索、Dich=翻訳、JLPT=日本語能力試験 です。ちなみにtra cứu は漢字変換すると【査+究】です。これには「検索する」のほか、「探求する」「研究する」するという意味もあります。
  ⇒ Tra cuu(検索) を選択してください。
 ⇒  Tu vung  Han tu  Cau Ngu phap …  の画面が出てきます。それぞれの意味は、Tu vung=語彙、Han tu=漢字、Cau=文(例文)、Ngu phap=文法です。
⇒ Tu vung(語彙)を選択し、調べたい日本語の単語を入力し、🔍をクリックすると、ベトナム語に翻訳されます。短い文章ならここでベトナム語に翻訳できます。ベトナム語の日本語への翻訳については、声調記号のついていないベトナム語は日本語に翻訳できません。
  ⇒ しらべた語彙を使った例文を見たいときは 次にCau(文) をクリックすると、例文が30個ほど出てきます。
※長い日本語文をベトナム語に翻訳する時は  Tra cuu Dich JLPT … の中のDich(翻訳) を選択し、Nhat⇒Vietのスペースに日本語文を入れて、 Dich をクリックしてください。右のスペースにベトナム語文が表示されます。

②ベトナム語-日本語辞書、Glosbe.url
日越、越日の翻訳ができます。この辞書は、調べた単語を使った様々なフレーズも教えてくれますので、表現力を広げたり、語彙力を高めるのにとても役に立ちます。ベトナム語を声調記号なしで書いたものでも日本語に翻訳してくれます。

③dict.com辞書(ベトナム語-日本語辞書)
この辞書も②と同様に、調べた単語を使った様々なフレーズを教えてくれます。また日本語からベトナム語への翻訳だけでなく、ベトナム語を声調記号なしで書いたものでも日本語に翻訳してくれます。

④越日・日越(ベトナム語・日本語)オンライン辞書
この辞書もベトナム語を声調記号なしで書いたものでも日本語に翻訳してくれます。

私は調べたい内容によって以上の4つの日越・越日辞書を使い分けています。私にとって一番使い勝手がいいのは①です。ただし、文章の翻訳の時に、上記の各辞書が通常の会話で使われる言葉を使って翻訳をしているとは限りません。機械による自動翻訳には限界がありますので、例えばベトナム語に翻訳させた場合は、会話でそのような表現が実際に使われているのか、また適切に翻訳しているのかをベトナム人にチェックしてもらうなどの対策が必要な場合もあります。

次回は、ベトナム語における形容詞述語文と名詞述語文について述べたいと思います。また日本語とベトナム語で類似している提題構文およびそれと関連した主題と主語(「は」と「が」の用法の違い)等について述べたいと思います。

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